税理士法人プラスカフェ代表/税理士・行政書士・CFP(日本FP協会認定)
今井 沙矢香
大学卒業後、大阪の税理士法人にて勤務の後に出産を機に退社。育休から復帰後は税理士法プラスカフェの設立に携わる。「若手・女性」の税理士は、税理士業界では少数派であるが、そこをプラスに変えて、お客様へ寄り添い適確なアドバイスをすることをモットーにしている。自らが代表を務める京都の事務所では、得意とする相続税申告、またその関連業務を中心に行っている。
相続税の申告を税理士に依頼する場合、いくら費用がかかるかご存じでしょうか?税理士へ支払うこの費用を「報酬」といいますが、相続に直面しない限り、その報酬額を知る機会はないといえるでしょう。
かつては(旧)税理士報酬規定によって定められていた報酬額ですが、現在は税理士事務所(法人)が各々自由に料金設定できるようになっています。とはいえ、ほとんどの税理士は同じような料金体系を設けているため、報酬額の目安を知ることが可能です。
この記事では、報酬額の相場と、納得できる税理士選びのポイント等を解説いたします。相続税申告における税理士選びの参考に、ぜひお役立てください。
※料金体系・報酬を公開している税理士事務所(法人)のHP等を参考とした相場の解説となります。料金表や目安を公開していない税理士も多くいるため、依頼をお考えの方は、事前に個別の情報を必ずご確認ください。
目次
税理士が報酬設定の基準とするのが、多くの場合「遺産総額」です。
まず遺産総額に応じて「基本報酬」が提示され、対象となる事情や遺産があれば「加算報酬」が追加されます。
①基本報酬
「最低限かかる基本料金」のことです。適切な資料を収集する、正確に税額を計算し申告する、といった、全ての依頼に共通する業務が含まれます。故人が所有していた財産が規模の大きいものであったり種類が多いと、遺産総額が高くなるケースが多いため、基本報酬は遺産総額によって上下します。
②加算報酬
相続する財産の内容、それに伴い必要となるサービス等によって追加されていく報酬です。案件ごとに有無や項目数は異なるため、おおまかな遺産内容が把握できた時点で税理士に説明し、報酬額を見積もってもらうようにしましょう。
ざっくりと平均をとると、次のようになりました。
遺産総額 | 基本報酬額(目安) |
~5000万円 | 25万円 |
5000万円~7000万円 | 40万円 |
7000万円~1億円 | 55万円 |
1億円~1億5000万円 | 70万円 |
1億5000万円~2億円 | 85万円 |
2億円~2億5000万円 | 100万円 |
2億5000万円~3億円 | 130万円 |
3億円~ | 160万円 |
遺産総額のおおよそ0.5%~1%が基本報酬額になると考えてよいでしょう。
また相続税は、遺産総額から基礎控除額等を引いた残りの金額に対してかかります。税率は次の通りです。
区分 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | – |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続税のあらまし【国税庁】:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sozoku-tokushu/souzoku-aramashih30.pdf
基本報酬だけでも意外と高いな…と感じた方が多いのではないでしょうか。また、相続税が発生する人は、税理士報酬の支払いと相続税の納付が重なり、同時期にまとまったお金が必要となる可能性があります。とりわけ、多額の遺産を相続することになりそうな人は、こうした相場を知っておき、費用面での心積もりをしておくことをおすすめします。
基本報酬内にどの程度の業務・サービスを含めるかは、税理士によって異なります。加算報酬も、どの程度発生するかは、担当する税理士の判断によります。ここでは、よく見られる加算報酬対象の財産、案件内容をご紹介いたします。
土地は、評価方法や評価基準がやや複雑であり、且つ、遺産総額のなかで大きな割合を占めるものです。税理士が多くの知識と時間を要するため、故人が所有していた土地の数が多い場合や、特殊な土地が含まれる場合は、加算報酬の対象となることがあります。
<相場>1区分につき5万円~7万円を加算
非上場株式は、上場株式と違い評価が難しいため、加算報酬の対象となる場合が多いようです。
<相場>1社につき10万円~15万円を加算
相続税の申告では、相続人と被相続人(故人)の関係等により、適用可能な控除や特例、そのために必要となる書類が変わってきます。相続人情報の取りまとめや申告書作成の手間が増えるため、加算報酬の対象となる可能性が高いでしょう。
ただし、相続人が個々に別の税理士に依頼するよりも、同じ税理士にまとめて依頼する方が費用は抑えられるはずです。
<相場>(相続人2人目から)1人につき基本報酬の10%を加算
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。申告期限を過ぎると、追加で税金が課される等のペナルティが発生するため、税理士は期限に余裕を持った申告を意識しています。申告期限が近いと「特急料金」として加算報酬が発生するとお考えください。
「申告不要と思っていたが、大きな遺産があることがわかってどうやら申告が必要だ」
「多忙で、気付けば申告期限まで時間がない…!」
といった方は少なくないかと思います。お早めに税理士にご相談されることをおすすめします。
<相場>税理士報酬の総額の20%を加算(期限まで3ヶ月を切っている場合等)
「別途見積り」「応相談」等と書かれていることが多いケースをまとめました。加算報酬として追加されることが予想されますが、相続税の申告とは別の依頼として扱われ、新たに基本報酬から見積もられることも考えられます。
相続税が発生する場合、申告期限の10ヶ月以内に納税も済まさなければなりません。金銭での一括納付が原則ですが、納税資金を用意できない人は、延納や物納が認められるケースがあります。申請書類の用意、提供担保の確認等の手続きが大幅に増えるため、加算報酬の対象として設定されることがほとんどです。
農地を相続し、農業を後継する場合は、納税猶予(最終的には免除)する制度があります。この特例の適用を受けるためにも、提供担保関係の業務等が増えるため、加算報酬の対象となる場合がほとんどです。
骨董品や知的財産等、故人が特殊な財産を有していた場合も、加算報酬の対象となるでしょう。財産評価をしてくれる専門の鑑定士が必要な場合等、別途専門家に報酬を支払うことも想定しておきましょう。
被相続人が亡くなった年(1月1日から亡くなった日まで)に所得があった場合は、相続人が代行して確定申告を行う必要があります。これを「準確定申告」といい、期限は4ヶ月以内と定められています。一般的には、相続人から代表者をひとり決め、連署によってまとめて申告します。
これを税理士に依頼する場合、別途見積りとなるケースが多いようです。
イレギュラーな事態で税理士報酬が増額される可能性がある案件、反対に減額されることもある案件を少しご紹介します。
相続財産と税額の計算も進み、税理士報酬額も固まっている…という段階で、新たに故人の遺産が見つかった場合等は、見積り額が増額される可能性が高いでしょう。その遺産を誰がいくら相続するかといった協議を待ち、財産目録の変更、税額の再計算等が必要なため、増額される可能性があります。
控除や特例が適用され計算した結果、相続税額が0円となった場合、「税額0円割引」や「値引き」を実施している税理士もいるようです。
相続税申告における税理士報酬の相場をご紹介しましたが、報酬額だけで税理士を選ぶことはおすすめしません。
・同じ税理士なら安い方がいい
・報酬額が高い方=質の高い税理士なのでは?
等とお考えの方は、ここで挙げる税理士選びのポイントを是非ご確認ください。
資産税、法人税、所得税と、税金には種類があり、税理士にも得意分野があります。税理士の能力によって、財産評価額が変わることは大いに考えられます。すなわち税額にも影響するため、相続税に関して深く応用の効く知識と豊富な経験を持った、専門の税理士を探しましょう。節税や、相続する財産を守ることにもつながるはずです。
豊富な経験があれば料金体系を設けることができるはず、とも言えます。料金表等を公開せず「応相談」とだけ表記している税理士も多く見られますが、相談者の不安をできるだけ少なくするための情報を発信しているのかを確認してみてはいかがでしょうか。
相続税申告への自信の表れとしてひとつの指標となるものに、「書面添付制度」があります。これは税理士のみが作成できるものであり、申告書・税務代理権限証書と併せて税務署に提出されます。
記載される内容としては、
・評価が複雑であった相続財産の計算の流れや根拠
・相続人から相談があった事項とその結果
・控除や特例について、税理士から相続人へ説明した内容
・提出書類からだけではわかりにくい事情等
など様々です。これらを項目ごとに決まった書面にまとめます。では、その作成の目的を国税庁HPから引用してご説明します。
書面添付制度は、税理士の社会的信用・地位の一層の向上が図られるとともに、ひいては納税者の適正申告の向上や納税者との信頼関係の醸成等に資するものである。
法第33条の2の書面を作成することにより、納税者に対する税理士の責任の範囲が明確化されることにもなる。
法第33条の2の書面を提出することにより、調査の要否の判断等に積極的に活用されるほか、事前通知前の意見聴取の結果によっては、帳簿書類の調査に至らない場合もあり得る。
書面添付制度について【国税庁】:https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/kentoukai/02.htm
つまり、
「税務署から指摘されやすい事項、補足が必要と思われる事項について、税理士があらかじめ書面で説明することで、申告書の品質を保証する」
といった効果があるということです。
この書面添付があった場合、万一税務署が申告内容に疑問を持ったとしても、まず税務署からは税理士に意見聴取がなされます。この意見聴取の結果、納得できる回答が税理士から得られた場合は、税務調査は行なわれません。
また、この制度を活用したうえで申告内容に不備があった場合、税理士にペナルティが課されるというリスクもあります。そのため、書面添付を実施していても、加算報酬の対象とする税理士が多いのが現状です。書面添付を常時実施・案内しているということは、相続税申告に自信がある税理士だと判断できます。
税理士法人プラスカフェでは、この書面添付を全ての相続税申告で実施しております。依頼者と税務署、両者からの信頼獲得を目指し、相続専門の税理士が相談から申告書作成まで一貫してご担当いたします。
いかがでしたでしょうか?相続税申告を税理士に依頼する場合は、
を確認するため、是非この記事をご活用ください。とりわけ自力での遺産把握が難しく、また納税資金等に不安がある方は、お早めに税理士にご相談されることをおすすめします。
「基本報酬」と「加算報酬」の分かれた料金体制についてご説明しましたが、税理士法人プラスカフェでは、お客様にとってわかりやすい御見積書をご提示するため、最初から込々の金額でお見積りをいたします。
特殊な土地の評価や業務量が通常より多い場合などは、数万円加算させていただくこともございますが、実際には加算金額がない場合の方が多いです。
また、相続財産に不動産がない場合には、報酬金額の減額をさせていただいております。
そのため、「基本報酬」「加算報酬」と分かれている料金体制の場合と結果的には大きな違いはございません。
書面添付につきましても最初から含まれております。
その他税理士法人プラスカフェの報酬についてご質問等ございましたら、お気軽にお問合せ下さいませ。
※この記事は、令和4年11月28日現在の法令に基づいています。