相続税申告に必要な書類について税理士が解説!

この記事の監修

税理士法人プラスカフェ代表/税理士・行政書士・CFP(日本FP協会認定)
今井 沙矢香

大学卒業後、大阪の税理士法人にて勤務の後に出産を機に退社。育休から復帰後は税理士法プラスカフェの設立に携わる。「若手・女性」の税理士は、税理士業界では少数派であるが、そこをプラスに変えて、お客様へ寄り添い適確なアドバイスをすることをモットーにしている。自らが代表を務める京都の事務所では、得意とする相続税申告、またその関連業務を中心に行っている。

家族や親族が亡くなったとき、遺された財産を相続する人は、その内容によって相続税を納付しなければならない場合があります。税務署に対して相続税の申告をすることになりますが、申告にはいくつかの、ときには多くの書類を用意しなければなりません。頻繁に経験するものではない「相続」の場面で、何が何のために必要か判断し、効率のよい手順で収集する必要があります。

この記事では、

  • 相続税申告時の提出書類
  • 財産を把握するため等に必要な書類
  • 各書類の取得場所

などを、はじめての方でもわかりやすいように解説しています。ぜひ、相続税申告準備にお役立てください。

 

 

相続税申告に必要な書類

相続税の申告には、国が定める書式の申告書と、相続内容により異なる様々な書類を、相続人で用意する必要があります。

 

全ての方に必要な書類

 

書類 内容 取得場所 備考
申告書 第1表~第15表 最寄りの税務署もしくは国税庁HP。郵送での取り寄せも可。 使用しない表は提出しなくてよい。
相続人の本人確認に

かかわる書類

全ての相続人のマイナンバーがわかる書類等の写し e-taxで申告する場合は不要。
身元確認書類の写し
被相続人、相続人の関係をあきらかにする書類の写し

(右記いずれか)

被相続人の全ての相続人をあきらかにする戸籍謄本 市町村役場 相続開始から10日以上経過したのちに作成されたもの。
法定相続情報一覧図 法務局にて作成を依頼 必要な戸籍を集め、被相続人の本籍地を管轄する法務局にて作成してもらえる。

 

死亡した人を「被相続人」といい、財産等を相続する人を「相続人」といいます。

マイナンバーがわる書類にはマイナンバーカードの両面コピー等、身元確認書類には免許証やパスポートの写し等を用意しましょう。また、相続税も確定申告のようにe-Taxにて申告することができるので、この場合はこれらの書類は提出不要です。

 

 

遺言書と遺産分割協議書

被相続人が生前に遺言を遺している場合は、お手元や法務局、公証役場に保管されている遺言書の写しが必要です。遺言書がない場合、相続人どうしで相続割合を話し合い、遺産分割協議書として内容をまとめるなどします。遺産分割協議書を作成した場合は、これの写しも提出しましょう。合わせて、その協議書に押印した印鑑登録証明書の原本も、相続人全員分提出しましょう。

なお、(法定)相続人がひとりだけの場合は、遺産分割協議書は必要ありません。

 

 

相続財産に関する書類

相続する財産には、現金預金だけでなく、土地や生命保険など様々なものがあり、財産によって用意すべき書類が異なります。

「用意すべき書類」と書きましたが、全てを申告書と併せて提出しなければならないわけではありません。財産を把握するため、および計算の根拠となる書類は見やすくまとめて、必要と判断されたものは申告書と併せて提出されることをおすすめします。

 

不動産(土地・建物)を相続する方が必要な書類

書類 取得場所 備考
登記簿謄本 法務局 課税証明書でも可
固定資産評価証明書 市町村役場
公図または地積測量図 法務局 インターネットで請求、郵送受取なども可
住宅地図 インターネットなど
賃貸借契約書 お手元に保管されているもの マンションなどを借りている場合
路線価図または倍率表 国税庁HP 申告する年のもの

相続財産に不動産が含まれている場合は、その評価額から税額を計算します。この評価額の根拠となる書類が必要となります。土地は路線価、建物は固定資産税評価額が計算のもととなる場合が多いため、該当年のものを用意しましょう。

賃貸物件の場合は、お手持ちの賃貸借契約書のコピーを用意しましょう。

 

預貯金を相続する方が必要な書類

書類 取得場所 備考
残高証明書 口座のある金融機関 被相続人が死亡した日=相続開始時点のもの
通帳の写し又は預金の取引履歴が確認できる書類 お手持ちのもの、その他確認書類なら金融機関 5年分程度
既経過利息計算書 金融機関 定期預金がある場合

相続する預貯金額は、被相続人が亡くなった日の残高となりますが、既経過利息等も相続財産となるため、残高証明を発行してもらえれば確実です。

また、被相続人の家族等の名義の、いわゆる「名義預金」であっても、実質的には被相続人の財産であると判断されるものは相続財産となります。

 

有価証券:株式や投資信託を相続する方が必要な書類

書類 取得場所 備考
取引残高報告書 契約している証券会社
配当金支払通知書 お手元になければ発行元へ問い合わせ
決算書 発行元 非上場株式がある場合、3期分必要

有価証券も、被相続人が亡くなった日の取引残高をベースに相続財産が計算されます。また配当金があった場合は通知書が届いているはずですので、残高証明書と併せて用意しましょう。

 

生命保険を受け取る方が必要な書類

書類 取得場所 備考
死亡保険金支払通知書 生命保険会社
解約返戻金がわかる資料 支払がなかった保険、名義保険がある場合

被相続人が亡くなったことで支払われる死亡保険金は、契約者・被保険者・受取人が誰であるかによって、相続税の対象となるかが決まります。支払通知書に明記されていることがほとんどですが、内容がわかる書類を用意しましょう。

 

その他

上記の他で、代表的なものを2つご紹介いたします。

  • 死亡によって退職金が支払われる場合

被相続人の死亡によって、本来本人に支給されるものであった退職金や功労金、その他退職手当に相当する給与を受け取る場合、被相続人の死亡後3年以内に支給されるものは、相続財産とみなされます。

非課税限度額(500万円×法定相続人の数)を超えた分に課税され、その場合は被相続人の勤務先から発行される「死亡退職金の支払通知書」または「源泉徴収票」が必要です。

 

  • 生前贈与があった場合

過去3年以内に生前贈与された財産は相続税の課税対象になります。相続税の「生前贈与加算」と呼ばれる制度です。相続税を減らす目的等で、亡くなる直前に財産を贈与していても相続税の課税対象は減らない→課税の公平性が保たれる、という仕組みです。

お手元に保管されている、贈与があったときの「贈与税申告書」や「贈与契約書」を用意しましょう。

 

 

特例や控除に関する必要書類

特例や控除によって、相続税額を少なくできる場合があります。代表的な特例や控除について、適用できる場合に用意する書類を確認していきましょう。

なお、ここでご紹介するほぼ全ての特例や控除の適用には、

  • 全ての相続人を明らかにする戸籍謄本、又は法定相続情報一覧図
  • 遺産分割協議書の写し
  • 印鑑証明書原本

のセットが必要となります。ただし、複数の特例や控除が適用される場合でも、提出するのは1セットで大丈夫です。

 

(特例)小規模宅地の特例

被相続人が生前、居住用・事業用として使用していた宅地等について、課税価格の計算をする際、一定割合を減額することができます。定められた限度面積などの条件をクリアすれば、最初にご紹介した「相続人を明らかにする書類」「遺言書や遺産分割協議書」などがあれば大丈夫です。もし申告期限内に遺産分割ができない場合は、併せて「申告後3年以内の分割見込書」を提出すれば特例は適用可能です。

 

被相続人が最期、養護老人施設などに入居していた場合はどうなる?

被相続人が要介護認定を受けて養護老人ホームに入居し、その間住まれていなかった家に関しても、一定の条件をクリアすれば特例は適用されます。提出書類は次の通りです。

 

  • 被相続人の戸籍の附票(相続開始の日以後に作成されたもの)・・・市町村役場
  • 被相続人が、要介護認定や支援認定を受けていたことがわかる書類の写し
  • 施設の概要と、入居していたことがわかる契約書などの写し

 

被相続人が経営していた会社に土地を貸していた場合はどうなる?

被相続人が、自ら経営する会社に土地を貸して事業用として使っていた場合、その土地は「特定同族会社事業用宅地」として特例の適用対象となります。相続人や今後の土地の使い方にいくつかの条件がありますが、クリアすれば大きな節税につながります。提出書類は次の通りです。

  • 対象となる法人の定款の写し(相続開始時に効力を有するもの)
  • 対象となる法人の、相続開始直前における発行済株式の総数、または出資の総額がわかる書類
  • 被相続人の親族、その他被相続人と特別の関係がある者が有するその法人の株式の総数または出資の総額がわかる書類

 

(税額控除)配偶者の税額軽減

被相続人の配偶者が相続する財産が1億6000万円以下であれば、まず適用されます。

  • 申告後3年以内の分割見込書(申告期限内に分割ができない場合に提出してください)

 

(特例)農地等に係わる贈与税・相続税の納税猶予

農地を相続し、農業を後継する場合は、納税猶予(最終的には免除)する制度があります。※ほかにも適用条件あり

・相続税の納税猶予に関する適格者証明書・・・農業委員会

・相続税の納税猶予の特定貸付に関する届出書(特定貸付を行っている場合)

・担保として提供する財産の明細書、およびその他担保の提供に関する書類

 

 

葬儀費用や借金などの債務に関する書類

相続開始時に被相続人がまだ支払っていなかった税金やローン、またお通夜や葬儀にかかる費用などは「債務控除」といい、相続財産の価額から差し引くことができます。ここでは、主な債務の種類と、控除を受けるために用意すべき書類をご紹介します。

 

葬儀費用として控除が可能なもの、必要書類

・通夜葬儀費用の領収書

・葬儀関係の支払いメモ・・・心付けやお布施など、領収書がないものは、支払先や金額を記録しておく

※通夜葬儀にかかわる費用には、控除対象となるもの・ならないものがあります。

こちらの国税庁のHPを参考にしてください。

 

債務に関する必要な書類

  • 住宅ローン等の借入残高証明書(被相続人の死亡日現在のもの)・・・金融機関
  • 金銭消費貸借契約書(金融機関以外からの借入がある場合)・・・借入先
  • 未納の租税公課の納税通知書や領収書

本来、被相続人が支払うべきだったものは控除対象となります。未納の税金の納税通知書や、相続開始後に相続人が支払ったものの領収書などが必要です。・・・お手元になければ役所などにて取得

  • 未払金の領収書

お手元にある医療費の領収書、公共料金やその他クレジット決済の請求書などが対象です。

 

 

まとめ

申告の期限は被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。葬儀や相続税申告の要否の確認が終わり、申告が必要な場合は、この記事でご紹介した様々な書類を用意しなければなりません。思いのほか手間と時間がかかる作業なので、ご自身がどういった書類をどれだけ用意しなければならないのか、ある程度把握しておくことが大切です。

不安を覚える方は、是非お気軽に税理士法人プラスカフェへお電話ください。HPのお問い合わせフォームからもご相談可能です。スムーズな書類収集のお手伝いや、資料の過不足の確認、また節税に関するアドバイスもさせていただきます。

 

 

※この記事は、令和4年9月9日現在の法令に基づいています。

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