相続税の申告期限はいつまで?申告までの流れや注意点を解説!

この記事の監修

税理士法人プラスカフェ代表/税理士・行政書士・CFP(日本FP協会認定)
今井 沙矢香

大学卒業後、大阪の税理士法人にて勤務の後に出産を機に退社。育休から復帰後は税理士法プラスカフェの設立に携わる。「若手・女性」の税理士は、税理士業界では少数派であるが、そこをプラスに変えて、お客様へ寄り添い適確なアドバイスをすることをモットーにしている。自らが代表を務める京都の事務所では、得意とする相続税申告、またその関連業務を中心に行っている。

大切な家族や親族が亡くなると、葬儀や遺品・遺産の整理など、予想以上に多くの手続きを進めていかなければなりません。

その内容は誰一人として同じではないので、遺産や債務の把握に、親族総出で取り掛からなければならない方も少なくないはずです。

遺産にも、所得などと同じように税金が課されることがあります。

これがいわゆる「相続税」で、確定申告等と同じように、申告や納付には期限があります。

この記事では、相続税の申告期限や流れについて、ざっくりとご説明いたします。

無理のない申告スケジュールの調整に、ぜひお役立てください。

 

申告期限は10か月!期限を守って申告と納税を

相続税の申告は、被相続人(亡くなられた人)が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行ないましょう。

例えば、1月1日に死亡した場合にはその年の11月1日が申告期限になります。

なお、この期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、これらの日の翌日が期限となります。

また、納税期限も同じとなっていますので、申告後もしくは申告と同時に相続税を納めましょう。

申告は、被相続人の住所地を所轄する税務署に、相続税の申告書を提出することで完了します。

 

「死亡した日」=「死亡したことを知った日」?

“死亡したことを知った日”とは、通常であれば被相続人の死亡日当日ですが、状況によっては必ずしも「相続開始日(死亡日)=被相続人が死亡したことを知った日」とはならないこともあります。

例えば、遠方に住んでいて、相続人のなかで自分だけがやむをえず数日後に死亡を知らされた場合などが該当すると思われます。

【死亡した日と死亡したことを知った日が異なる特別な場合】

(1)失踪の宣告を受けて死亡したとみなされた者の相続人または受遺者

・失踪宣告に関する審判の確定のあったことを知った日

(2)相続について既に生まれたものとみなされる胎児

・法定代理人がその胎児の生まれたことを知った日

(3)相続開始の事実を知ることのできる弁識能力のない幼児

・法定代理人がその相続の開始のあったことを知った日

(相続開始の時に法定代理人がいないときは、後見人が選任された日)

(4)遺贈によって財産を取得したもの

・自己のためにその遺贈のあったことを知った日

 

申告までの流れとは?10ヶ月間にしなければならないこと

では、申告・納税期限がわかったら、この10ヶ月間で何をしなければならないのか、また期限を過ぎてしまった場合はどうなるのかを確認していきましょう。

 

相続人の把握・確認

被相続人にとってどういった関係の人が・何人の人が遺産を受け取るのか、その相続人全員で把握しておくことがまず大事です。

この情報共有ができていないと、後々の揉め事にも繋がりかねません。

 

相続人・受遺者の確認

財産(債務等も含む)を受け取る人を確認します。

法定相続人(民法で定められた配偶者や子などの相続人)以外にも、遺言書などで財産を取得する人(受遺者)が指定されていることがあります。

 

遺産分割協議書の作成

遺言がなく、相続人が複数いる場合、法定相続分通りに遺産を分配する、もしくは相続人どうしで話し合い金額や割合を決めることとなります。

この話し合いを遺産分割協議といい、誰が見てもわかるよう概要をまとめた協議書を作成することにより、相続税申告書と併せて税務署に提出します。

 

財産や債務の資料を集めて目録作成

被相続人が遺した財産および債務(借金など)を調べます。土地など、後に名義変更等が必要になるものもあるので、資料を集めてわかりやすく目録を作成しておきましょう。

財産の内容や金額によっては、申告が不要になることもあります。

 

各種申告と納付

いよいよ申告手続きです。相続税の申告はもちろんですが、亡くなられた方の生前の職業や収入等によっては別の申告も必要なケースがあります。期限をしっかり覚えておきましょう。

 

相続人の所得税を申告:準確定申告(4か月以内)

被相続人が亡くなった年(1月1日から亡くなった日まで)に所得があった場合は、相続人が代行して確定申告を行う必要があります。

これを「準確定申告」といい、期限は4か月以内と定められています。

一般的には、相続人から代表者をひとり決め、連署によってまとめて申告します。

亡くなった方(所得者本人)が生前に住んでいた住所地を管轄する税務署に、準確定申告書を作成し提出しましょう。

フリーランスや事業主で確定申告を行なっていた次のような人が亡くなったとき、申告が必要です。

  • 事業所得・不動産所得がある場合
  • 2,000万円を超える給与がある場合
  • 複数企業から給料がある場合
  • 公的年金による収入が400万円を超える場合
  • 給与・退職金以外で20万円を超える収入がある場合

 

相続税の申告(10か月以内)

作成した財産目録などをもとに、第1表~第15表からなる相続税の申告書を完成させます。

最寄りの税務署や国税庁HPなどから入手しましょう。

必要な提出書類がある場合はそれらをすべて揃え、期限内に、被相続人の住所地を所轄する税務署に提出(申告)します。

あわせて相続税を納付しましょう。

※国税庁 申告書様式一覧

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/r04.htm

 

期限を過ぎるとどうなる?ペナルティと例外

この記事の流れを順当にクリアし、期限内に相続税の申告を行なえることが理想です。

しかし万一、期限に間に合わなかった、納付を忘れていた、などの場合はどうなるのでしょうか?

 

追加で税金が課される

10ヶ月の期限内に相続税を申告しなかった場合、また納付をしなかった場合、追加で税金が課されます。

代表的なものをご紹介いたします。

  • 相続税を申告期限後に納付した場合に課される「延滞税」

相続税が、定められた期限までに納付されない場合には、納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が課されます。

  • 相続税を申告期限までに申告していない場合に課される「無申告加算税」

正当な理由なく、相続税の申告を期限までにしなかったときに課されます。申告することなく申告期限を経過し、その後において、申告する必要があることを自分で気付く、または税務署から指摘されて気付く場合などが該当します。

  • 他にも、少なく申告してしまっていた場合に課される「過少申告加算税」や、財産の仮装隠ぺいを行った場合に課税される「重加算税」などがあります。

 

特例が使えない

相続税にも、税額を減らすことにつなげられる様々な控除や特例があります。

申告期限を過ぎると適用されないことがあり、大きな節税の条件を失ってしまいます。

代表的な特例は「小規模宅地等の特例」と「農地の納税猶予」です。小規模宅地の特例は、申告期限内であっても、特例適用の申告が漏れていて期限後に適用を受けたいと申し出ても認められません。しかし、ただ申告が遅れただけで遺産分割協議書は完成しているという場合には適用されます。

農地の納税猶予については、期限を過ぎれば適用は認められません。

節税のためにも、期間内の申告が非常に大事といえるでしょう。

 

どうしても間に合わない場合:分割見込書

「相続財産の計算は終わっているのに、遺産分割協議がまとまらず申告手続きが進まない」場合はどうすればよいのでしょうか?

こんなときは、財産を法定相続分で分割したと仮定して未分割の相続税申告書を作成し、その際「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付する、という方法があります。

これは、「まだ遺産分割が決まっていない財産については、期限後3年以内に分割する見込みである」という意思表示です。

後日、遺産分割協議が終わり相続分が確定したら、改めて還付請求(更正の請求)や追加納付(修正申告)を行ない、相続税額の調整が可能です。

 

分割見込書と特例・控除について

前述の通り、期限内に申告ができない場合は原則、控除や特例が適用されません。

しかし、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出する際、財産が未分割であるやむを得ない事由、及び分割時期の見込みを記載すれば、次の3つについては適用を受けることができます。

  1. 配偶者の税額軽減
  2. 小規模宅地等の特例
  3. 特定計画山林についての特例

 

分割後の申告手続き

本来の期限後3年以内に遺産分割が確定したら、その内容で課税価格や税額を計算しましょう。

その内容が当初の申告と異なる場合は、該当する申告手続きを、相続人ごとに速やかに行ないましょう。

①新たに申告義務が生じた人(当初申告書未提出の人)→期限後申告

②当初申告より税額が多くなった人→修正申告

③当初申告より税額が少なくなった人→更生の請求※分割の日の翌日から4か月を経過する日までに!

なお、分割見込書提出に際して、特例や控除を受けようとする旨を記載した場合は、①~③いずれの場合でも、分割の日の翌日から4か月を経過する日までに申告しましょう。

 

例外

申告期限を知らなかった・処理に手間取ったという理由では、相続税の申告・納税を延長することはできません。

ただし特別な事情が認められれば、延長が可能です。

例えば、相続人となる胎児が生まれた場合や、認知などで相続人の異動があった場合などです。

 

まとめ:安心して期限内に相続税を申告したい方は、ぜひ税理士法人プラスカフェへ!

今回は、相続税の申告期限と、期限を過ぎてしまった場合のペナルティと対処方法をご紹介しました。

「10ヶ月」と聞くと、急がなくてもいいのでは?と思う方もおられるかもしれません。

しかし、故人の葬儀や法要で慌ただしい日が続き、その後に財産把握などを行うには、決してゆとりある期間ではありません。ご自身で申告を行なう場合は、しっかりとスケジュールを調整して進めていきましょう。

不安な点や、申告のご依頼は、税理士への早めのご相談をお勧めいたします。

税理士法人プラスカフェでは、節税対策はもちろん、代行できる資料収集などを含めたプランニングをさせていただきます。是非いちど、お気軽にお電話ください。

 

※この記事は、令和4年9月9日現在の法令に基づいています。

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